2019 金賞受賞 株式会社I&S BBDO 小阪 将央さん
ネットで調べるのは最終手段
昨年のジャパン・シックシート・アワードにて金賞を受賞された小阪 将央さんに、日々の作品製作から、大きなサイズのクリエイティブで行う表現の捉え方、アイディアの膨らませ方まで幅広くお話を伺いました。

2019 金賞作品 課題:「Yahoo!天気」アプリ
「雨雲レーダー」という、リアルタイムで雨雲の動きがわかるスマートフォンアプリの良さを、メッセージアプリになぞらえて、一目で理解できるシンプルなグラフィックで表現した作品です。
作品を作成するにあたり、「バス停に掲出された大型広告」というフォーマットをどのように意識されましたか?
過去の受賞傾向から下記の3つの点を意識しました。
- ・コピーがなくても成立する
- ・縦長の「間」を上手く活かしている
- ・要素が極端にすくない
アイディア出し方、膨らませ方のコツなどがあればお聞かせください。
今回のyahoo!天気アプリでは、 課題を見た後に、まずは紙に「yahoo!天気アプリ」から連想されるキーワードを書き出していきました。 最初のキーワード出しの段階ではネットは使わずに、必ず紙とペンだけでかき出すようにしています。 キーワードの書き出しもそんな時間をかけずに1課題30分程度で、あとは頭に課題を置いておくようにしています。 その後に、出てきたキーワードからアイデアを考えていきました。 そのときに「雨雲がいつくるか分かる」という価値を→「雨雲からメッセージが来る」という価値に置き換えて、ビジュアルもメッセージ画面風にしようと考えました。 そのアイデアを一週間ほど寝かしてから、もう一度見て、課題→アイデア→ビジュアルまでスムーズに落ちているのか確認しました。 時間を置いた後でも分かりやすかったので、この案を制作することにしました。 また、アイディアを考える時には、ネットで調べることを最終手段だと意識しています。 自分の中にある情報や価値を駆使して考えたほうが、不純物が少なくて素直なアイデアになると思うためです。自分の中の情報でどうしてもアイデアに落とせないときは、ネットで情報収拾したりすることもあります。 とにかく紙にかき出すことが自分には合ってるなと思ってます。
ジャパンシックスシートアワード応募のきっかけ
試しとして5年ほど前からいろんなアワードに片っ端から応募をしていました。 その中でジャパンシックスシートアワードを見て応募するようになりました。 2018年に応募した時にファイナリストとなりまして、今年こそは金賞を獲りたいと思い、応募を決めました。 特にyahoo!天気アプリは身近で自分でも使っていたアプリなので考えやすいと思い、真っ先に作り始めました。
課題を選ぶにあたり、決め手となったポイントを教えてください。
どの課題も面白そうと思ったので、すべての課題のアイデアを考えて応募しました。 その中で優先度をつけるときは、企業や商品イメージが強いものを優先的に考えています。 イメージが弱いと、商品説明でビジュアルが終えてしまい、強いビジュアルにするのが難しかったりしますが、イメージが強いと、表現を少し飛ばしても理解しやすかったりするので、表現の幅も広がり作りやすいと思っています。
作品製作時のスケッチ。吹き出しが徐々に雲形になっている過程が描かれている
小阪さんのSNSアカウント
小阪さんの幅広いプライベートワークを覗くことができます。
インスタグラム
https://www.instagram.com/k0sakamasao/?hl=ja
Twitter
https://twitter.com/k0sakamasao
普段は広告代理店でアートディレクターのお仕事をされているそうですが、 お仕事での製作と、プライベートワークでの共通点や、逆に新鮮な部分にはどんなものがありますか。
平日は仕事、休日に自主制作というかたちで両立しています。 仕事とプライベートワークでは、発想する過程の感覚は、共通している面もありますが、 公募の方がより課題と商品価値が明確に設定されていてアウトプットに集中できるので、 ストレス発散のような感覚で取り組んでいます。 また公募は全て自分のアイデアで、アウトプットも自分でできてしまうので、 自分の力100%で生み出した作品が評価されるのは、かなり面白い部分かなと思っています。 仕事のチームで動くのも周囲の人からの得ることが多く面白いですが、 自主制作でも得ることが多いので、どちらも大事にしていきたいです。
大きな変化を続ける社会の中で、広告のクリエイティブは、今後、どのように変化していくと思われますか?
情報が溢れている中で、生活者の意識もどんどん細分化しており、万人に効果的なクリエイティブというものがなくなってきているなと感じています。 そのため、今まで以上にいろんなシチュエーションで見る人の気持ちになって広告を考えることが必要になってくると思います。 これからの広告はある一つの価値観の押し付けではなく、生活者に寄り添うようなものに変化していかなければいけないと思っています。 その中で、シックスシートの広告がとても良いのは、あれだけ大きな掲出スペースなのに情報量がとても少ないことです。 情報の押し付けじゃなく、そっと掲出されてて、その場に馴染んでいるのでスッと目に入って気持ちがいい広告が多いです。 そういった情報の押し付けじゃなく、相手をポジティブな気持ちにする広告が大事になると思います。
今後の目標
多岐にわたる分野で人の心を動かすクリエイティブを手がけていきたいです。