2024年 銀賞受賞:川村 真悟 さん 古山 昂典 さん
課題: 肉まん・あんまん
「広告掲載するだけで社会のためになる広告、そういう広告がより増えていくのではと思いますし、増えてほしいです。」

2024年のジャパン・シックスシート・アワードにて銀賞を受賞された川村さんと古山さん。チームとして応募いただいたお二方に、応募に至るまでのいきさつや、制作過程など、さまざまなお話をお伺いしました。
Q1:応募に至るまでのいきさつを教えていただけますか。
川村:私は個人で2020年と2023年に協賛企業賞1点、2024年にはファイナリストとして1点選ばれ、以前から挑戦しておりました。きっかけは、過去の作品もコピーと写真だけの組み合わせもあり、自分でも挑戦できるかもと思ったからです。ただし、自分はPPTしか使えないので、23年受賞の入稿データを作成いただいたのが古山さんでした(笑)
古山:去年は別の方とチームを組んでファイナリストに選出していただいたこともあり、今回は更に上を目指したいと思っていたところ、川村さんにお声がけしていただきました。
川村:会社も住む場所も違うふたりが出会えたのは、Xの#コピグラというコピー公募です。コピーが大好きなふたりですが、そこで古山さんがデザイナーであることを知り、別の企画公募ではチームで受賞したこともあります。今回、本課題をみた瞬間に自分が声をかけました。その理由はのちほど。
Q2:お仕事での制作とプライベートワーク(受賞作品含めます)との対比など伺えますでしょうか。
川村:仕事では営業的な立ち位置が中心で、クリエイティブに関わることはほとんどありません。ただ、公募と実務、どちらもクライアント課題を解決する点では同じだと思っていますが、公募は数ある案の中からいかに審査員さんの目に止まるかがまずは重要だと考えております。
古山:仕事では主に新聞広告を制作していますが、伝えたい情報が多く、あれもこれも目立たせたいという要望ばかりです。1ビジュアル・1コピーで自由に表現できる公募でストレス発散をしています。(笑)
Q3:この課題を選んだ理由についてお聞かせください。
川村:先ほど、企画公募で受賞したことを書きましたが、その企画公募で初めて古山さんとチームで取り組んだ企業の課題であったこと、その時に一次通過もできなかった悔しさから、この課題を見た瞬間に、絶対に古山さんとリベンジしたいと考えました。
古山:同じく、因縁の課題だったので、川村さんからお声をかけていただいたときに、即答でリベンジを誓いました。
Q4:受賞作品の着想から、クリエイティブの制作に至るまでの過程(アイデアの膨らませ方のコツなどがあれば)をお聞かせください。
川村:私の「ふーふー円満」という言葉がまず先でした。肉まんを、誰かと食べる身近な幸せにできないかと考えました。まずは、夫婦。(夫婦円満が子どもの幸せです。自分は、親が喧嘩ばかりで離婚しましたので。)夫婦とふーふーをかけて、幸せな夫婦を描けないかと思いました。古山さんに、この言葉をもとにしたデザインをお願いしました。
古山:ターゲットである夫婦の特徴を考えたときに、顔がだんだん似てくるのは円満の証拠だなと思い、意識して描きました。「ふーふー」と言葉を入れてしまうと少し説明的になってしまうので、思い切ってイラストだけで勝負しました。全体的に気の抜けたテイストにすることで、夫婦一緒に肉まんを食べることの温かさを強調させました。
川村:夫婦って、顔が似てくるまでは意識しておりませんでしたが、ラフも完成も戻し一切なしでした。ふーふーは言葉を使わずにイラストだけで表現されたこと、イラストのインパクトすべてパーフェクトでした。
Q5:シックスシートならではというフォーマットをどのように意識されましたか?(大きさ、シチュエーション、見る人の行動など)
古山:バス停の前を通り過ぎる人と、バス停でバスを待つ人の両者を意識しました。前者には目を引くインパクト、後者にはよく見ないと気づけない仕掛け。重要性の割合で言うとインパクト9、仕掛け1くらいの感覚です。今回のデザインだとイラストのインパクト、夫婦とふーふーが掛かっている仕掛け。このバランス感覚を試せるところが、シックスシートならではだと考えます。
川村:公募ならですね。贈賞式の時に、国井さんも夫婦とかかってることは後で気づかれたと話されていたので、実務ならちゃんと夫婦と言葉でもわかるようにすることや商品がもっと目立つようなビジュアルを求められそうです。先ほど、古山さんがあれもこれも目立たせたいと書かれていましたが。こういう挑戦ができることが、公募の醍醐味だと思います。シックスシートアワードの場合、実際に掲出もされるので、実務と公募の二刀流的な?笑
Q6:今回からのテーマに基づき、サスティナブルなOOH(屋外広告)やメディアの役割が一層注目されています。多様に変化する社会や環境への配慮が求められる中で、広告の作り方や伝え方はどのように変化していくでしょうか?
川村:まず第一に、広告ってウザいんですよ。WEB広告なんて、強制的に見せるような仕掛けが増えている気がします。その点で、OOHは見るのは自由ですし、逆に言えばいかに見てもらえるかという仕掛けが必要だと考えます。また、ストリートファニチャーという点でシックスシートはいいメディアだと思います。広告掲載するだけで社会のためになる広告、そういう広告がより増えていくのではと思いますし、増えてほしいです。さらに、その広告メッセージも、社会課題も解決できるとよりいいですね。サントリーさんが展開されているコピー「素晴らしい過去になろう。」がありますが、そういう未来をちゃんと見ているメッセージはささりますね。
古山:AIが進化することでますます洗練された広告が増えていく中で、対になる人間味や愛らしさがより必要になっていくと思います。作るのはAIでも触れるのは人間です。心が入っているものに心は動かされると思うので、AIと上手に付き合いながらも、昔と今も変わらない本質的な人間臭さを残せられるかが重要だと考えます。
Q7:今後の目標などがあればお聞かせいただけますか。
川村:自分は仕事ではなかなかクリエイティブには関わらないので、コピーやデザイン、企画の公募でバランスをとっています。この公募では古山さんと金賞を狙いつつ(笑)、他の公募でもグランプリを狙います。デザインスキルも上げて、個人でもクリエイティブの仕事ができるような未来をイメージしています。
古山:公募に挑む理由のひとつに「人脈を広げたい!」があります。というのも、同世代のクリエイターと出会う機会が少なく、SNSでつながっていても実際にお会いしたことがない方が多いからです。いつしか公募の授賞式で受賞者の方々と出会うことが、目標のひとつになっていました。そういった出会いを通じて、新しい視点の発見や、負けていられないというモチベーションにつなげ、今後も成長していけたらなと思います。